Tuesday, July 05, 2022

"放流鰻能打敗天然鰻嗎? "~人工養殖鰻的競爭能力下降~

 

各地で通年行事的におこなわれているウナギの放流ですが、
「養殖したウナギを放流しても、自然界では生き延びられないのではないか?」
という疑問は以前からささやかれていました。
この論文では複数の実験の結果、⽇本で⼀般的に放流されている養殖ウナギは飼育の過程を通じて種内競争の能⼒が低下しており、そのことが放流後の⽣き残りや成⻑に悪影響を与えている可能性があることが示されました。
「放流ウナギは天然ウナギに勝てるのか? 〜養殖場の飼育を通じて、ウナギの種内競争の能力は低下する〜」
(日本の研究.comより)
各地全年舉行鰻放流, 但「放流鰻不會在自然界生存? ""的疑問已經存在很久。
多次試驗結果顯示,日本人工繁殖鰻,對物種競爭的能力下降,放生後的生存和成熟可能造成負面影響。
"放流鰻能打敗天然鰻嗎? "~透過人工養殖鰻的競爭能力下降~


https://research-er.jp/articles/view/112287


関連データ・研究者

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 推定分野について  

関連研究者

 東京大学 大気海洋研究所 特任研究員 - 2021年度
推定分野 

  • 当サイトで紹介しているプレスリリースの多くは、単に論文による最新の実験や分析等の成果報告に過ぎませんので、ご注意ください。  詳細

中央⼤学研究開発機構の脇⾕量⼦郎機構助教(現在は東京⼤学⼤気海洋研究所)、⻘森県産業技術センター内⽔⾯研究所、⿅児島県⽔産技術開発センター、神⼾⼤学、⽔産研究・教育機構、福井県農林⽔産部⽔産課、中央⼤学法学部の海部健三教授からなる研究グループは、効果的なウナギの放流⼿法を検討するため、天然ウナギと放流される養殖ウナギについて研究を⾏い、⼆つの論⽂として発表しました。研究の結果、⽇本で⼀般的に放流されている養殖ウナギは飼育の過程を通じて種内競争の能⼒が低下しており、そのことが放流後の⽣き残りや成⻑に悪影響を与えている可能性が⽰されました。今回得られた知⾒の他にも、養殖ウナギの放流は、病原体の拡散などを通じて天然ウナギにも悪影響を与える可能性があるため、養殖ウナギの放流については注意深いアプローチが必要です。



本研究のポイント

  • ⽇本各地でウナギの放流が⾏われているが、効果検証は進んでいない。
  • 天然ウナギと養殖ウナギ(放流ウナギ)の関係について、⾏動観察、混合飼育、標識放流の三つの⼿法を通じて研究を⾏い、その結果を⼆つの論⽂として公表した。
    実験1 ⾏動観察︓ほぼ同じサイズの天然ウナギと養殖ウナギを1個体ずつ⼩型⽔槽に⼊れ、噛みつき⾏動とパイプ(隠れ場所)の占有率を基準に⾏動を解析したところ、養殖ウナギに対し、天然ウナギが優位な地位を占めていた。
    実験2 混合飼育︓ほぼ同じサイズの天然ウナギと養殖ウナギを約2年間、同じコンクリート⽔槽で混合飼育したところ、天然ウナギと混合飼育した養殖ウナギは、養殖ウナギのみで飼育した場合と⽐較して、⽣残率と成⻑速度のどちらもが低かった。
    実験3 標識放流︓国内の4つの河川で標識放流調査を⾏ったところ、天然ウナギの⽣息密度の⾼い河川では、放流ウナギの成⻑が遅いことが⽰された。また、放流したウナギの個体数は、2年間で 94.9%減少した。
  • 以上の結果より、本研究は天然ウナギが種内競争を通じて養殖ウナギの適応度を低下させる可能性をはじめて⽰した。
  • これらの論⽂は、ニホンウナギの放流効果の検証に関する研究として、査読を経て学術誌に掲載された最初の学術論⽂である。



研究の背景

ニホンウナギを増やすことを⽬的として、⽇本各地でウナギの放流が⾏われています。たとえば⽇本では、2018 年の河川や湖沼におけるウナギの漁獲量が 69 トンであるところ、同年のウナギ放流量は 201 万個体(およそ 30 トン1)に上ります。ニホンウナギの減少が社会的な問題とされる中、ウナギの放流は国内最⼤規模の資源保全策と⾔えるでしょう。

⽇本におけるウナギの放流では通常、養殖場で育てられたウナギを川や湖に放します。ウナギを川に放せばウナギが増えそうなものですが、どの程度のウナギが⽣き残るのか、ニホンウナギについて放流の効果を検証した学術論⽂は存在しませんでした2。そこで中央⼤学を中⼼とした研究チームは、放流されたニホンウナギがその後どのくらい⽣き残り、成⻑するのか、多⾓的なアプローチを⽤いて調査しました。

ウナギの放流については、天然ウナギが既に⽣息している⽔域に養殖されたウナギ(放流ウナギ)を放流することで、ウナギの種内競争が激化する可能性が考えられます。しか

しながら、養殖ウナギが放流される場合の、天然ウナギとの競合については、ほとんど知⾒がありませんでした。そこで研究チームは、【実験1 ⾏動観察】⼩型⽔槽での⾏動観察、【実験2 混合飼育】屋外コンクリート⽔槽での飼育実験、【実験3 標識放流】河川での標識再捕獲調査により、放流される養殖ウナギに天然ウナギが与える影響について検証を⾏いました。




1 個体の重さを平均 15 グラムと仮定しています。

2 ⾏政の調査報告書、査読を経ていない⽂献は存在します。古い報告には、戦前に刊⾏されたものもあります。



研究の内容

【三つのアプローチの関係】

この⼀連の研究では、⾏動観察・混合飼育・標識放流の三つのアプローチを⽤いてニホンウナギの放流について調べています。⼩型⽔槽を⽤いた⾏動観察は室内実験のため、条件のコントロールやデータ取得が容易ですが、実際にウナギが放流される河川とは環境が全く異なっています。反対に、河川にウナギを放流して追跡する標識放流は野外実験であり、条件コントロールやデータ取得が難しい反⾯、実際に⾏われているウナギ放流に近い状況を再現できます。屋外コンクリート⽔槽を⽤いた混合飼育は屋外実験であり、上記⼆つの中間的な特徴を持ちます。三つのアプローチを組み合わせることで、より詳しく、より正確な知⾒を得ることが可能になりました。



図2:本研究で⽤いた三つのアプローチの⽐較


【実験1 ⾏動観察】

ウナギ 1 匹のみが⼊れる太さのパイプ(隠れ場所)を⼊れた⼩型⽔槽に天然ウナギと養殖ウナギ1個体ずつ(全⻑差 5%未満)を⼊れ、14 ペア 28 個体の⾏動(噛みつき⾏動、パイプ占有)を録画し、ビデオ画像から⾏動の分析を⾏ったところ、以下の結果が得られました。これらの結果から、天然ウナギは養殖ウナギに⽐べより攻撃的で、⾼い競争⼒を有することが⽰されました。ただし、攻撃性の強弱には個体差があり、天然ウナギは必ず養殖ウナギに優占する、ということではありません。また、論⽂内には記載されていませんが、養殖ウナギ同⼠、天然ウナギ同⼠でも同じような攻撃⾏動が観察されています。


  • 天然ウナギの1時間あたりの噛みつき回数(5.7 回±3.1 回/時間)は、養殖ウナギの回数(0.44 回±0.45 回/時間)を有意に上回り、9 割近くを占めました。
  • パイプ占有について、観察した 839 回のうち 666 回(79.4%)で天然個体が占有していました。



図3:実験に⽤いた⽔槽

右:全体像。左:隠れ場所としてのパイプを設置し、ニホンウナギを⽔槽に⼊れた状態。



図4:隠れ場所のパイプ占有(左)と噛みつき⾏動(右)

⽔槽番号が同じものは、同⼀⽔槽における同じウナギの組み合わせの観察結果を⽰す。


【実験2 混合飼育】

2014 年 10 ⽉〜2016 年 10 ⽉の 2 年間、屋外にある 3つのコンクリート池のうち、2 つの池は試験区としてそれぞれ天然ウナギ 5 個体、養殖ウナギ 5 個体を⼊れ、もう 1 つの池はコントロールとして養殖ウナギのみ 10 個体を⼊れて、同条件で⽣き餌(エビ)を与えながら飼育したところ、以下の結果が得られました。これらの結果より、天然ウナギの存在により、養殖ウナギの⽣残率や成⻑が低下したと考えられます。



図 5:飼育⽤のコンクリート⽔槽(⿅児島県) 


  • 飼育開始から 2 年後、天然ウナギと混合飼育した養殖ウナギの⽣残率(40%)は、養殖ウナギのみで飼育した場合の⽣残率(90%)よりも有意に低い値を⽰しました。
  • 成⻑について、1 ⽇あたりの体重増加量(g/⽇)は養殖ウナギのみで飼育した場合よりも、混合飼育した養殖ウナギで有意に低い値を⽰しました。
  • 養殖ウナギのみで飼育したウナギの合計体重(バイオマス)は混合飼育した天然ウナギと同様に増⼤しましたが、混合飼育した養殖ウナギでは増加しませんでした。



図 6:天然ウナギと養殖ウナギの⽣残率

シンボル(●、■、▲)はそれぞれ異なる池を⽰す。池■と池▲の天然ウナギ(混合飼育)は実験終了まですべて⽣き残ったため、2 つの緑の線が重複している。



図 7:天然ウナギと養殖ウナギの成⻑

a:平均体重の変化

b:合計体重(バイオマス)の変化

いずれも計測時点で⽣きている全ての個体の体重を計測している。


【実験3 標識放流】

⾃然環境下における、放流ウナギの成⻑・⽣残と天然ウナギ密度との関係を調査するため、天然ウナギの⽣息密度が異なる 4 つの河川(⿅児島県⾙底川、静岡県波多打川、福井県三本⽊川、⻘森県⻑沢川)に養殖ウナギを同密度で放流し、3 ヶ⽉後、1 年後、2 年後に放流ウナギの⽣息密度、成⻑、動きの観察を実施し、天然ウナギとの違いを分析したところ、以下の結果が得られました。これらの結果から、天然ウナギが⽣息する河川に放流された養殖ウナギは、種内競争の結果、成⻑速度が低下すると推測されます。


  • 2 年後の放流ウナギの個体数密度は河川間で有意に異なりませんでしたが、放流時から 94.9%減少しました。
  • 天然ウナギが少ない河川(福井県三本⽊川、⻘森県⻑沢川)の放流ウナギは、天然ウナギの多い河川(⿅児島県⾙底川、静岡県波多打川)よりも有意に速く成⻑しました。



図 8:調査河川の位置(左)、電気ショッカーによる採集調査(右) ⽣残個体の合計体重(g)







研究の成果、今後の展開

⼀連の研究から、飼育を通じて養殖ウナギの種内競争の能⼒が低下し、天然ウナギに対して劣位となることが明らかにされました。このことから、天然ウナギが⽣息する⽔域に養殖されたウナギを放流することによって、放流効果が低下する可能性が⽰されました。放流ウナギと天然ウナギは遺伝的に同⼀の集団であるため、養殖ウナギの種内競争の能⼒の低下は養殖場における飼育そのものがその要因と考えられます。

養殖ウナギと天然ウナギの種内競争の能⼒の違いとともに、今回の放流⽅法では、2年間で約95%の個体数減少が観察されました。同様の結果は静岡県が⾏なった調査3でも確認されており、本研究で⽤いた⼿法での放流によってニホンウナギ資源を⼤幅に増⼤させることは、困難であると考えられます。今後は、放流の効果を改善するための研究として、例えば以下の項⽬が考えられます。これらの研究を通じて、現在⾏われているウナギの放流について、改めて検討を⾏う必要があります。


(1) 放流後の⽣残と成⻑が期待できるウナギを⼊⼿することを⽬的とした、飼育⼿法の改善を検討する研究

(2) より放流に適した⽔域の環境条件を明らかにすることを⽬的とした、汽⽔域や湖沼など、今回の研究で対象とした⼩規模河川の淡⽔域以外の環境において⾏われる標識放流調査

(3) 天然ウナギにとって有害な病原体の拡散など、ウナギ放流がもたらす負の影響に関する研究

(4) ウナギ放流の経済的なコスト・ベネフィット、現在のウナギ放流の制度が形成された歴史的背景など、社会科学的な視点からの研究



謝辞

これらの研究は、⿅児島県ウナギ資源増殖対策協議会、⽔産庁鰻供給安定化事業のうち「効果的な放流⼿法検討事業」(平成 28 年度〜平成 31 年(令和元年)度)、科研費(JP19KK0292, JP17H03735)、CREST(JPMJCR13A2)、中央⼤学の研究予算によって進められました。実験1および2では鈴⽊⽒、⼭本⽒、吉沢⽒、吉永⽒より、実験 3 では加藤⽒、北原⽒、望岡⽒、吉⽥⽒、静岡県より、それぞれご協⼒いただきました。ここに感謝します。


3 鈴⽊邦弘ら(2017)「伊東市⼩河川における養殖ウナギの放流後の動向」⽉刊海洋, 49, 560-567



論⽂情報

実験1、実験2§ タイトル︓Agonistic behaviour of wild eels and depressed survival and growth of farmed eels in mixed rearing experiments.(和訳︓天然ウナギの攻撃的⾏動と養殖ウナギの⽣残率と成⻑速度の低下)

  • 著者︓脇⾕量⼦郎(東京⼤学)・板倉光(東京⼤学)・今吉雄⼆(⿅児島県)・海部健三 (中央⼤学)
  • 掲載誌︓Journal of Fish Biology(ジャーナル・オブ・フィッシュ・バイオロジー)§ 掲載⽇︓ 2022 年 4 ⽉ 27 ⽇
  • リンク︓https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jfb.15047


実験3

  • タイトル︓Slower growth of farmed eels stocked into rivers with higher wild eel density.(和訳︓天然ウナギ密度の⾼い河川に放流された養殖ウナギが⾒せる低い成⻑速度)
  • 著者︓脇⾕量⼦郎(東京⼤学)・板倉光(東京⼤学)・平江多績・猪狩忠光・真鍋美幸(⿅児島県)・松⾕紀明(⻘森県)・宮⽥克⼠(福井県)・坂⽥雅之・源利⽂(神⼾⼤学)・⽮⽥崇(⽔産研究・教育機構)海部健三 (中央⼤学)§ 掲載誌︓Journal of Fish Biology(ジャーナル・オブ・フィッシュ・バイオロジー)
  • 掲載⽇︓ 2022 年 6 ⽉ 28 ⽇
  • リンク︓https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jfb.15131

 

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